「ナイアシンアミドとビタミンCは、一緒に使うと効果がなくなる」
「併用すると肌に刺激が出るから避けた方がいい」──
そんな噂を一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
どちらも美白・毛穴・シワ改善に効果があるとされる定番の美容成分。
だからこそ、「併用できるのか?」という疑問は、スキンケアにこだわる人ほど気になるポイントです。
この記事では、「なぜ併用NG説が広まったのか?」という背景から、
現在の皮膚科学の見解、実際の化粧品開発での配合設計、そして“相乗効果”の可能性まで──
ナイアシンアミド×ビタミンCの併用について、最新の研究と実務視点の両面から検証していきます。
🧪なぜ「併用NG説」が広まったのか?
🧯「一緒に使うと効果が打ち消し合う」──そんな噂の出どころは?
ナイアシンアミドとビタミンC(アスコルビン酸)は、どちらも有効性の高い美容成分として広く知られています。
特に、くすみ・色素沈着・毛穴の目立ち・エイジングサインなど、共通する悩みにアプローチする成分として、多くの人が併用を検討する組み合わせです。
しかし、「併用NG」という情報も根強く流通しています。
- 効果が相殺される
- 混ざると肌に刺激を与える
- 肌が赤くなる、ピリつく
- 結合して不安定な物質に変化する
といった説は、SNSや美容掲示板、旧来のブログ記事などで繰り返し取り上げられ、今でも信じている人が少なくありません。
では、この「併用NG説」はどこから来たのでしょうか?
その答えは、1970〜80年代の古い研究と、製剤技術の進歩前の化粧品事情にあります。
📜出どころは“pHの違い”と“褐変反応”に関する旧来の懸念
併用NG説が広まった主な要因は、以下の2点に集約されます。
① pHが異なることで不安定になるという説
- アスコルビン酸(ビタミンC)は、pH3前後の強い酸性環境で安定
- ナイアシンアミドは、pH6前後の中性〜弱アルカリ性で安定
→ 併用することで、pHバランスが崩れてどちらも不安定になると考えられた
② “ニコチン酸”への変化と刺激リスク
ナイアシンアミドは、強い酸性下に置かれると**ニコチン酸(ナイアシン)**という物質に変化する可能性があります。
ニコチン酸は、肌に赤みやヒリつきを引き起こすことがあるため、「併用=刺激が出る」という印象が広まりました。
特にこの点は、1970年代に報告された実験データをもとに、「この2成分は混ぜるべきではない」と解釈された背景があります。
💡その“変化”は現実のスキンケアで起きるのか?
ここで重要なのは、これらの懸念が「どんな環境で起きるのか?」という点です。
実は上記のようなpH変化やニコチン酸への変化は──
- 非常に高温環境
- 高濃度のビタミンC(10%以上)
- 長時間の混合保存状態
- 精密なラボ環境での反応測定
など、日常的なスキンケアではまず起こりにくい条件下で確認されたものでした。
さらに近年の研究では、ナイアシンアミドがニコチン酸に変化するには、かなり低いpH(2以下)と高温が必要であることがわかっています。
一般的な化粧品ではpH3.5〜6.5の範囲で設計されるため、現実的には変化のリスクはほとんどないとされています。
🧪皮膚科学と製剤技術の進化が「併用NG」を過去の話にした
2000年代以降、化粧品原料の安定化技術や誘導体開発が急速に進化しました。
- ビタミンCはアスコルビン酸だけでなく、**安定型ビタミンC誘導体(VCエチル、MAP、APPSなど)**が登場
- ナイアシンアミドも、高純度・高安定型のグレードが確立
- 配合設計では、両者の最適pH範囲を共存させることが可能に
このような背景から、実際には併用処方の商品は市販製品としても多数登場しており、臨床的にも問題なく使用できることが立証されつつあるのです。
たとえば:
- ビタミンC誘導体+ナイアシンアミド配合の美白美容液
- オールインワン化粧品に両成分を含む処方
- 海外医療機関監修のスキンケア製品での併用処方
これらはすでに多くの製品で採用されており、消費者からの刺激報告も極めて少なく、むしろ「両者を組み合わせた方が良い」という評価さえ得られています。
📌結論:NG説の根拠は古く、現代スキンケアには当てはまらない
「併用NG」という情報は、古い化学データと製剤設計の限界が生んだ副産物でした。
今やスキンケアは、単成分ではなく多成分の相互設計が主流。
ナイアシンアミドとビタミンCは、その最前線に立つ組み合わせのひとつと言えるでしょう。
次章では、現代の皮膚科学と化粧品設計の視点から、「なぜ“併用可能”がスタンダードになっているのか」を詳しく解説します。
🔬最新の皮膚科学では“併用可能”がスタンダード
📚「ナイアシンアミド×ビタミンCはNG」から「併用が有効」へ
スキンケア成分の安全性や相互作用に関する研究は、ここ10年で飛躍的に進んでいます。
その中で、ナイアシンアミドとビタミンCの関係も見直され、「むしろ併用することで相乗効果があるのではないか?」という新たな知見が積み重なってきました。
2020年以降の複数の皮膚科学レビューや製剤研究では、以下のような結論が共通して出ています:
- 併用による安定性の問題は、現実的なpH環境では発生しにくい
- ビタミンCの抗酸化・美白作用と、ナイアシンアミドの抗炎症・バリア改善作用はむしろ補完的
- どちらか一方よりも併用の方が、色素沈着やくすみに対して効果的
つまり、「一緒に使わないほうがいい」という従来のイメージは、科学的にはすでにアップデートされているのです。
🧬それぞれの作用機序が「競合」ではなく「補完」
まずは、両成分の基本的な作用を見てみましょう。
■ ビタミンC(アスコルビン酸・誘導体)
- メラニン生成の抑制(チロシナーゼ阻害)
- メラニンの還元(黒色メラニン→無色化)
- 抗酸化作用(活性酸素の除去)
- コラーゲン合成の促進
■ ナイアシンアミド(ビタミンB3)
- メラノソーム(色素小体)の輸送抑制
- 皮膚バリア機能の改善(セラミド産生促進)
- 抗炎症作用(肌荒れ・赤み・にきび予防)
- 皮脂分泌の調整
注目すべきは、どちらも美白・くすみ対策に有効でありながら、「働く場所が違う」ことです。
ビタミンCは「メラニンを作らせない・還元する」
ナイアシンアミドは「メラニンを表皮に届けさせない・炎症やバリア低下を防ぐ」
つまり、競合するどころか、むしろ別ルートから同じゴールを目指しているのです。
🧴臨床研究と製品化が“併用可能性”を証明してきた
いくつかの代表的な文献や臨床データでは、併用処方による安全性・有効性が確認されています。
たとえば:
- ナイアシンアミド4%+ビタミンC誘導体(APPS)を含む化粧水を12週間使用したグループにおいて、
肌の明るさ・色ムラ・キメに有意な改善が見られた(国内大手化粧品会社の社内研究) - 敏感肌を対象に、ナイアシンアミド5%+VCエチル2%の処方を使用した試験では、刺激報告はなく、むしろ赤み・肌荒れが減少
- 欧州皮膚科学会での報告では、「両成分を組み合わせることで、低濃度でも高いスキンケア効果が得られる」と評価
このように、科学的根拠(エビデンス)と現場での経験値(実績)の両面から、
「併用しても問題ない」どころか、「むしろ併用したほうが良い」という流れが生まれています。
🧪“刺激が出る”のは、配合バランスや他の成分が原因かも
ただし、すべての製品で併用が必ず快適に機能するとは限りません。
- ビタミンCの濃度が高すぎる(10%以上)
- ナイアシンアミドが高濃度(10%前後)で肌に合わない
- アルコールや香料が配合されていて刺激が出ている
- 他の成分(ピーリング剤やレチノールなど)との相互作用がある
このような場合、「ナイアシンアミド×ビタミンCのせい」と思われがちですが、
実際にはその他の要因によって“刺激”が発生しているケースがほとんどです。
製品選びや使用ステップに工夫を加えることで、快適に併用できる条件は十分整えられます。
次章では、実際にどういう条件下で両成分を併用すればよいのか、配合バランスと濃度設計のポイントについて詳しく見ていきます。
🧴併用時に気をつけたい配合バランスと濃度設計
🧪「併用できる」ことと「快適に使える」ことは別問題
前章までで、ナイアシンアミドとビタミンCの併用は皮膚科学的に問題なく、むしろ推奨されるケースが増えていることを解説しました。
しかし、実際にスキンケア製品で2つの成分を併用しようとすると、「刺激が出た」「赤くなった」「ピリピリした」という声がゼロではないのも事実です。
ここで重要なのは、「理論上はOK」でも「現実の肌にとって快適かどうか」は成分の濃度・処方・使い方によって大きく左右されるということ。
この章では、ナイアシンアミド×ビタミンCを安全かつ効果的に併用するための条件と設計ポイントを詳しく解説していきます。
📏ビタミンCは“高濃度ほどよい”とは限らない
ビタミンCは「濃ければ濃いほど効く」というイメージがありますが、濃度が高すぎると刺激や乾燥のリスクが増すのも事実です。
- アスコルビン酸の高濃度処方(10〜20%)では、特に敏感肌や乾燥肌の方にピリつきや赤みが出るケースが報告されています。
- 一方、VCエチルやAPPS、SAPなどのビタミンC誘導体は、5%前後でも十分な美白・抗酸化効果が得られるという研究が多く、肌にもやさしい傾向があります。
つまり、“濃度”よりも“安定性と吸収性のバランス”が重要です。
とくに併用を意識するなら、ビタミンC側は5%以下の誘導体型が最もバランスの取れた選択肢になります。
🎯ナイアシンアミドは「5%前後」が推奨濃度
ナイアシンアミドは耐性の高い成分とされていますが、濃度が高すぎると一部の人に刺激が出ることもあります。
- 2%でも皮脂抑制やバリア機能改善の効果が認められた臨床データあり
- 4〜5%で、美白・しわ・毛穴への多面的な効果が安定的に報告されている
- 10%以上では、特に敏感肌に赤みや乾燥が起きやすいという意見も
そのため、日常的な併用を想定するなら「2〜5%」の中間濃度がベスト。
「ナイアシンアミド10%美容液+ビタミンC高濃度美容液」のような組み合わせは、理論上は問題なくても、肌負担が大きく現れやすいので注意が必要です。
⚗️配合順序と使用タイミングにも工夫を
併用する際にもうひとつ大切なのが、「どういう順番・タイミングで使うか」という運用設計です。
■ 理想的な使用ステップ(例):
- 朝:ビタミンC誘導体美容液(2〜5%)→保湿乳液(+日焼け止め)
- 夜:ナイアシンアミド配合美容液(5%前後)→クリームやバームで蓋
このように、**朝と夜で使い分ける“交互設計”**にすると、刺激リスクを抑えつつ、両方のメリットを引き出せます。
■ 併用する場合の注意点:
- 1本で両方を配合した製品を選ぶ(バランスが最適化されている)
- セパレートで使うなら、ビタミンC→ナイアシンアミドの順が一般的(pH順の法則)
- 使用直後に肌が乾燥・ヒリつく場合は、間に保湿剤を挟む or 朝晩分ける
肌へのやさしさと効果を両立するには、「毎日、無理なく使えるリズムをつくる」ことが最大のカギです。
🧠刺激の原因は「併用そのもの」ではなく“設計不足”
SNSなどでは「この2つを一緒に使ったら赤くなったからNG!」という声も散見されますが、
多くの場合は以下のいずれかです:
- 濃度が高すぎる
- 一気に複数の新製品を使った
- 肌がすでにゆらいでいた(バリア機能低下時)
- ビタミンCがアスコルビン酸の高濃度だった
このように、肌トラブルの要因は成分の“組み合わせ”ではなく“設計の問題”であることが多いのです。
自分の肌の反応を観察しながら、
- 濃度を落とす
- 使用ステップを工夫する
- セパレート→配合済み製品への切り替え
など、段階的に調整していくことで、ナイアシンアミド×ビタミンCの併用は十分に現実的で快適なケア手段になり得ます。
次章では、実際にこの2成分を併用したときに期待できる“相乗効果”と、どのような悩みに最適なのかを整理していきます。
🧠ナイアシンアミド×ビタミンCは“相乗効果”を引き出せるか?
💡併用することで、効果が倍増する?
ナイアシンアミドとビタミンCは、それぞれ単独でも優れた機能を持つ成分です。
けれど、最近の皮膚科学や処方開発では、「併用することで単独使用以上の相乗効果が期待できる」とされるケースが増えています。
これは、両成分が異なる経路から、同じ肌悩みにアプローチできる補完関係にあるためです。
- ビタミンCはメラニンの生成を抑制し、すでにあるメラニンを還元する
- ナイアシンアミドはメラノソームの移動をブロックし、表皮への沈着を防ぐ
このように、メラニンに関しては**「作らせない+届けさせない+還元する」**という三重のガードが可能になります。
🎯具体的に、どんな肌悩みに相乗効果があるのか?
以下に、併用で特にメリットが大きいとされる代表的な肌悩みを示します。
■ くすみ・色ムラ
- ビタミンC:肌の明度を上げ、透明感を引き出す
- ナイアシンアミド:メラニンの輸送抑制+抗炎症作用で肌トーンを均一に
→ 併用することで「肌の明るさ+均一さ」の両面をカバーできる
■ 毛穴の開き・黒ずみ
- ビタミンC:皮脂酸化を防ぎ、毛穴内の黒ずみを抑制
- ナイアシンアミド:皮脂分泌抑制+角質層のバリア機能を整える
→ 皮脂コントロール×酸化予防という構造的な毛穴ケアが可能に
■ ハリ不足・小ジワ
- ビタミンC:コラーゲン合成促進
- ナイアシンアミド:水分保持機能の強化、真皮成分の合成サポート
→ 内側からの“押し返すようなハリ感”を底上げ
このように、併用することで“作用の範囲”が広がり、一つの悩みに多角的にアプローチできる構造が完成するのです。
🔬研究ベースでも“相乗効果”を示すデータが登場している
一部の文献や製薬企業の試験報告では、以下のようなデータが得られています。
- ナイアシンアミド+ビタミンC誘導体処方を4週間使用した群では、
肌の色ムラの減少率が、それぞれ単独使用群よりも高かった - シミ・肝斑に対する低濃度ビタミンCとナイアシンアミド併用群において、
メラニン値の低下速度が単剤使用の約1.5倍に達したという報告も
これらは、まだ限定的なデータではあるものの、「成分の良さを引き出し合う設計」が、臨床的にも現れ始めていることを示しています。
💡“両方使いたい”人にとっては、今やスタンダードな組み合わせ
以前は「ビタミンC使ってるから、ナイアシンアミドは控えよう」
あるいは「ビタミンCが強いから、ナイアシンアミドを避けておこう」という選択をしていた人も多いかもしれません。
でも、今のスキンケア処方は違います。
- 両成分を1本にまとめた美容液やローションが増加
- 製剤設計上も「併用前提」でのpH調整や濃度設計が進化
- 朝ビタミンC、夜ナイアシンアミドという分散使用も主流に
つまり、今では「ナイアシンアミド×ビタミンC」は、むしろ“考えなくていいくらい自然な組み合わせ”になりつつあるのです。
🧠相乗効果を出すために、覚えておきたい3つのポイント
- 濃度を欲張らない(VC 5%以内 × ナイアシンアミド 5%以内)
- 刺激を感じたら、朝晩や日ごとに使い分けてみる
- 単剤同士を足すより、バランス設計された処方を選ぶのも◎
こうした工夫を取り入れれば、「どちらか一方しか使えない」から「2つを活かし合えるケア」へと自然にステップアップできます。
🧭まとめ|“併用NG”の常識を手放した先にあるスキンケア
「ナイアシンアミドとビタミンCは一緒に使わないほうがいい」──
そんな説が語られていたのは、もはや過去の話です。
確かに、昔の化粧品設計では両成分の併用は技術的に難しい面がありました。
けれど、皮膚科学の研究と製剤技術の進化によって、「むしろ組み合わせたほうが効果的」というのが現代の常識になりつつあります。
- くすみ、毛穴、ハリのなさ
- 黒ずみ、色ムラ、肌のごわつき
こうした悩みに対して、ナイアシンアミドとビタミンCは異なる角度から補い合うパートナーのような存在。
併用を正しく設計すれば、単体使用では届かなかった肌変化が見えてくることもあります。
スキンケアは“引き算”より“掛け合わせ”が求められる時代へ。
その変化を、ぜひあなたの肌でも確かめてみてください。
🧪ちふゆのひとことメモ|「使ってはいけない」より「どう使うか」
成分開発をしていると、「これはNG」「あれは組み合わせNG」といった“禁止ルール”に出会うことがよくあります。
でも、その多くは「かつての条件で、かつての技術では難しかった」というだけの話。
今はもう、ナイアシンアミドとビタミンCを“どう設計するか”を前提にスキンケアを考える時代です。
- 濃度の最適化
- pHバランスの工夫
- 朝晩・日ごとの使い分け
こうした“やさしさと効果のバランス”を考えることで、肌にとってのベストがつくられていきます。
「使わない」選択より、「活かす」選択へ。
そのきっかけが、この記事になれば嬉しいです。
🛁Chocobraのケア思想も「掛け算の設計」です
毛穴の黒ずみや開きを改善するには、「取る」だけのケアでは足りません。
皮脂が酸化する前に流すこと、肌を摩擦から守ること、流れを習慣として整えること──
それらを一つにしたのが、毛穴磨きという考え方です。
Chocobraは、ブラシ・ジェル・美容液の3ステップ設計。
それぞれが独立して機能しながらも、組み合わせることで毛穴を“戻らせない構造”へと導く設計になっています。
成分を活かし合うように、ケア方法も「掛け合わせる」ことで肌は変わっていきます。